ニホンメダカ資料室

分類

ダツ目 > メダカ亜目 > メダカ科 > メダカ亜科 > メダカ属 > メダカ
いろいろな学説もあり、この分類が絶対に正しい、ということはありません。メダカの分類も、完全に確定しているわけではありませんし、変更になることもあります。いずれ様々な魚類の遺伝子情報が解明され、メダカの分類も確かなものになる日がくるでしょう。
ダツ目にはサンマ、トビウオ、サヨリなどの海産魚がいます。メダカは淡水魚ですが、これらの海産魚とよく似た特徴を幾つも持っています(「海産魚と共通の特徴」参照)。遺伝子情報の解明を待たなければいけませんが、メダカは淡水魚から進化したのではなく、海産魚から進化したと考えられています。

学名

Oryzias latipes(オリジアス ラティペス)
和名 ニホンメダカ
Oryzias は、イネの学名 Oryza sativa に由来します。latipes はラテン語で latus (幅広い) pes (足、つまり尻ビレ)という意味です。
また、和名「ニホンメダカ」は漢字で書くと「日本目高」です。目が大きく、高い位置にあるのでこの名前がつきました。日本各地には「メダカ」の方言があります。その数は5000以上とも言われています。その中でも「目」にまつわる名前が圧倒的多数を占めます。

寿命

飼われているメダカの寿命は3〜5年です。野生のメダカの場合は天敵がいたり、気候が変動したり、栄養状態が悪いため1年半ほどです。

食性

なんでもよく食べる雑食性です。植物プランクトン、動物プランクトン、草、花、小さな昆虫などを食べます。

泳ぎ方

危険を感じないときは、群れをなして水面付近をゆっくりと泳ぎます。メダカと他の魚の稚魚をよく間違えますが、慣れると泳ぎ方で見分けがつくようになります。
通常は流れのないところや穏やかなところを泳いでいますが、激しい流れの場合はそれに逆らって泳ぎます。川を遡ったり、用水路から水田に入ったりすることもあります。

生息域

淡水から汽水に棲んでいます。通常は水田、小川、川、池などにいます。しかし、耐塩性にもすぐれていて、海水の入ってくる河口でも生きていけます。海にメダカがいたという目撃情報もあります。

生息地域

世界のメダカ

世界には、14種のメダカがいます。
1. ニホンメダカ 2. ハイナンメダカ 世界のメダカの分布図
3. フィリピンメダカ 4. セレベスメダカ
5. マタネンシスメダカ 6. オルトグナサスメダカ
7. ニグリマスメダカ 8. マルモラタスメダカ
9. プロファンディコラメダカ 10. ジャワメダカ
11. チモールメダカ 12. タイメダカ
13. インドメダカ 14. メコンメダカ
地図の通り東アジアから東南アジアにのみ生息しています。アジアにのみ生息していることから、どこか一ヶ所で出現したメダカが海岸沿いに広がった後、地形の変動により隔離され、それぞれの地域で14種のメダカに進化したと考えられています。
また、北緯41度から南緯10度の範囲に生息していることもわかります。ニホンメダカ以外のメダカの生息地域を見てみると、北緯20度から南緯10度の熱帯から亜熱帯であることがわかります。耐寒性を持っているのはニホンメダカのみです。

ニホンメダカ

ニホンメダカの分布図
ニホンメダカは、北海道を除く日本、中国、朝鮮半島に棲んでいます。どの地域のメダカも外見は同じように見えますが、遺伝的にはいくつかのグループに分かれています。大きくは、北日本集団、南日本集団、東韓集団、西韓集団、の4つに分かれます。更に、日本に棲むニホンメダカについて詳しく見ていくと、北日本集団は均一な1つの集団で、南日本集団が「東日本型」「東瀬戸内型」「西瀬戸内型」「山陰型」「北部九州型」「有明型」「大隅型」「薩摩方」「琉球型」の9つの型に分かれます。
1987年に北日本集団と南日本集団の両方の遺伝子の特徴を持つメダカ(ハイブリッドメダカ)が丹後・但馬で発見されました。この地域のメダカは北日本集団と山陰型の雑種です。これは南北両集団に一旦分化したメダカが出会い、再び南北両集団と隔離され、分化したと考えられています。他の型の間にはこのような雑種は発見されていないことから、丹後・但馬で何か特別な事件が起こったと考えられています。

放流について

日本にいる10タイプのメダカは見た目にはほとんど同じに見えるのですが、遺伝的にはかなり異なっています。
ハイブリッドメダカがいるように、大きく異なる遺伝子間のメダカ同士でも子孫を残すことはできます。しかし、これはメダカの適応力がとても大きいから可能なことなのです。型の異なるメダカは、メダカにとって異星メダカのようなものです。
型の異なるメダカを混ぜることは、メダカにとって迷惑な話しなのです。そして、学術的にも迷惑な話しです。素性のわからないメダカを池や川に放流するのは絶対にやめましょう。どうしてもメダカを放流したいという人は、野外で採取して、増やして、採取した場所に放流しましょう(これもあまり進められることではないのですが)。ペットショップで買ってきたメダカが増えたから放流するという安易なことはしないでください。
問題は、メダカが減っていることではなく、メダカが棲めない環境が広がっているということです。大切なことは、メダカを守ることではなく、メダカの棲める環境を守ることです。環境を保護せず、メダカのみ保護し、メダカの棲めない環境に放流しても死んでしまうだけです。自然保護はペットショップで買えるような簡単なことではないのです。私たち人間は自然に対してもっと謙虚にならなければいけないのではないでしょうか。

生息温域

生息水温域は、0℃〜40℃です。熱帯から亜熱帯にしか生息できない他のメダカに比べると、ニホンメダカの耐温性はとても優れています。

海産魚と共通の特徴

メダカは、海産魚であるサンマ、トビウオ、サヨリなどとよく似た次のような特徴を持っています。
下あごが出ている
ヒレの位置
尻ビレが大きい
卵に毛が生えている
卵に付着糸がある
卵に油滴がある
精子と卵共に海水中でも受精能力がある

レッドデータブック

環境省発表のレッドデータブック(平成11年2月18日公表)では、メダカは絶滅危惧II類(VU)に指定されました(現在新しいレッドデータブックを作成中らしいです)。
環境省によると、絶滅危惧種II類とは、「現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来、絶滅危惧I類に移行することが確実と考えられるもの」と定義されています。つまり、まだなんとか野生に生息しているけど、このままいけば近い将来確実に絶滅危惧種I類になってしまう、ということです。絶滅危惧種I類とは、「現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの」と定義されています。つまり、このままの状態を続ければ、近い将来絶滅する、ということです。
絶滅(EX)     我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
野生絶滅(EW)     飼育・栽培下でのみ存続している種
絶滅危惧 絶滅危惧I類 絶滅危惧IA類(CR) ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種
絶滅危惧IB類(EN) IAほどではないが、近い将来における絶滅の危険性が高い種
絶滅危惧II類(VU)   絶滅の危険が増大している種
準絶滅危惧(NT)     現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
情報不足(DD)     評価するだけの情報が不足している種